「民泊を始めたいけど、何から手をつければいいの?」 「複雑な法律や手続き、正直よく分からない…」
そんな不安を抱えていませんか? 住宅宿泊事業法(民泊新法)は、自治体ごとの条例や細かなルールも多く、一人で全てを理解し、完璧に手続きを進めるのは至難の業です。
1. 設置の条件(「住宅」の定義と年間日数制限)
民泊新法で「住宅宿泊事業」として認められるには、以下の条件を満たす必要があります。
1-1. 「住宅」の定義(住宅宿泊事業法第2条第1項、住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)1-1. (1))
以下のいずれにも該当する家屋であること。
- 設備要件: 家屋内に台所、浴室、便所、及び洗面設備が設けられていること。
- 台所: 流水設備を備えた流し台及び調理用の台があること。
- 洗面設備: 流水設備を有しており、台所と別に設けること。
- これらの設備は、必ずしも一棟の建物内に設けられている必要はなく、例えば浴室のない「離れ」であっても同じ敷地内の「母屋」に浴室があれば問題ありません。
- 近隣の銭湯などの公衆浴場を浴室の代替とすることはできません。
- 居住要件: 現に人の生活の本拠として使用されている家屋であること。
- 具体例:
- 現に居住の用に供されている家屋(所有者、賃借人、転借人)。
- 別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋。
- 休日のみ生活しているセカンドハウス。
- 転勤により一時的に生活の本拠を移しているが、将来的に再度居住する予定の家屋。
- 人の居住以外の事業の用に供されている期間に人を宿泊させているものは「住宅」に該当しません。
- 具体例:
1-2. 年間日数の制限(住宅宿泊事業法第2条第3項、ガイドライン1-1. (2))
- 人を宿泊させる日数は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間において、1年間で180日を超えてはいけません。
- 正午から翌日の正午までの期間を1日と算定します。
- 条例による制限: 各自治体は、生活環境の悪化防止のため特に必要があると認められる限度において、条例で住宅宿泊事業を実施できる区域や期間を制限することができます(住宅宿泊事業法第18条、住宅宿泊事業法施行令第1条)。届出を行う自治体の条例を必ず確認する必要があります。
1-3. 宿泊者の衛生の確保(住宅宿泊事業法第5条、厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則第2条)
- 居室の床面積: 宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上を確保すること。
- 清掃・換気: 定期的な清掃及び換気を行うこと。
- 寝具の交換: 寝具のシーツとカバーなどについては、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替えること。
1-4. 宿泊者の安全の確保(住宅宿泊事業法第6条、国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則第3条、告示)
- 届出住宅に非常用照明器具を設けること。
- ただし、住宅宿泊事業者が不在とならない場合(家主同居型)であって、宿泊室の床面積の合計が50m²以下の場合は不要。
- 届出住宅に避難経路を表示すること。
- その他、火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置として国土交通大臣が定めるもの(詳細は「民泊の安全措置の手引き」などを参照)。
1-5. 住宅宿泊管理業務の委託義務(住宅宿泊事業法第11条、国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則第9条)
以下のいずれかに該当する場合は、国土交通大臣の登録を受けた住宅宿泊管理業者に住宅宿泊管理業務の全部を委託しなければなりません。
- 届出住宅の居室の数が5を超えるとき。
- 届出住宅に人を宿泊させる間、届出者が不在となるとき(日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在を除く)。ただし、届出者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一建築物内若しくは敷地内にある、または隣接している場合で、届出住宅の居室で自ら管理を行うものの数が5以下である場合は、委託不要となる場合があります。
2. 届出に必要な書類(住宅宿泊事業法第3条、住宅宿泊事業法施行規則第1条、ガイドライン2-1. (3))
届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行うことになります。一般的に必要となる書類は以下の通りです。
- 住宅宿泊事業届出書(所定の様式)
- 添付書類:
- 届出住宅に関する事項(別紙):
- 届出住宅の図面(間取り、台所・浴室・便所・洗面設備の配置、床面積等がわかるもの)
- 届出住宅の登記事項証明書
- 消防法令適合通知書
- 届出住宅の位置図
- 申請者が個人の場合: 住民票の写し、身分証明書等の本人確認書類
- 申請者が法人の場合:
- 会社の登記事項証明書
- 定款または寄附行為の写し
- 役員全員の住民票の写し
- 誓約書: 申請者が欠格事由に該当しないことを誓約する書面(個人用、法人用、マンション管理組合用など)
- 居住要件を証明する書類: 届出住宅が生活の本拠として使用されていることを示す書類(例:公共料金の領収書、郵便物、住民票など)
- 賃貸物件の場合: 賃貸借契約書の写し、賃貸人(および転貸人)による承諾書
- 区分所有建物(マンション等)の場合: 管理規約の写し、または管理組合による同意書(規約で禁止されていないことの証明など)
- 住宅宿泊管理業者に委託する場合: 委託契約書の写し、住宅宿泊管理業者の登録番号
- 届出住宅に関する事項(別紙):
3. 禁止事項
民泊新法において直接的に「禁止」と明記されている事項は少ないですが、以下の行為は法令違反となり、行政指導や業務停止命令の対象となります。
- 年間180日を超える営業: 年間営業日数上限(180日)を超えて営業すること。これは旅館業法違反となります。
- 無届での営業: 都道府県知事等への届出を行わずに住宅宿泊事業を営むこと。
- 虚偽の届出: 届出書や添付書類に虚偽の内容を記載すること。
- 義務の不履行:
- 宿泊者の衛生・安全確保措置を講じないこと。
- 宿泊者名簿を作成・備え付けないこと、または虚偽の記載をすること。
- 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関する説明を怠ること。
- 苦情への対応を怠ること。
- 標識を掲示しないこと。
- 定期報告を怠ること。
- (委託義務がある場合に)住宅宿泊管理業者に管理業務を委託しないこと。
- (仲介義務がある場合に)住宅宿泊仲介業者または旅行業者に仲介業務を委託しないこと。
- 「ラブホテル」用途での利用: 届出住宅において、時間貸しなどによって実質的にいわゆるラブホテルの用途として住宅宿泊事業が行われることは禁止されており、厳しく取り締まられます(ガイドライン「「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」概要の抜粋」より)。
4. 注意事項
- 自治体ごとの条例: 住宅宿泊事業法は国の法律ですが、各自治体は条例によって、より厳しい期間制限や区域制限、追加の届出・報告義務などを課すことができます。必ず、届出を行う自治体の条例を確認してください。特に、学校や住宅街に近いエリアでは、特定の期間(例:平日)の営業が制限されることがあります。
- 消防法・建築基準法: 住宅宿泊事業を行う住宅は、消防法及び建築基準法の規定にも適合している必要があります。特に用途変更や増改築を行う場合は、事前に所管の消防署や建築指導課に相談し、必要な手続き(建築確認申請、消防用設備等の設置届など)を行ってください。
- 本人確認: 宿泊者に対し、宿泊開始までに本人確認を行う義務があります。対面またはICTを活用した対面と同等の方法(顔と旅券が画像で鮮明に確認できることなど)で行う必要があります(ガイドライン2-2. (2))。
- 宿泊者名簿: 宿泊者全員の氏名、住所、職業を記載した宿泊者名簿を作成し、3年間保存する義務があります。代表者のみの記載は認められません。
- 周辺住民への配慮: 騒音、ゴミ出し、深夜・早朝の出入りなど、周辺住民とのトラブルを防止するための適切な措置(説明書の配布、緊急連絡先の明示、苦情対応体制の整備など)を講じる必要があります。苦情対応については、必要に応じて速やかに現地へ赴く(目安30分以内、交通状況により60分以内)など、具体的な対応体制を整えることが推奨されています。
- 保険への加入: 火災保険や賠償責任保険への加入は義務ではありませんが、「望ましい」とされています(ガイドライン1-1. (3))。万が一の事故やトラブルに備えて、適切な保険に加入することを強く推奨します。
- 税金: 住宅宿泊事業で得た収入は、不動産所得や事業所得として確定申告の対象となります。税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
これらの法令やガイドラインを遵守し、適正な民泊運営を心がけることが重要です。不明な点があれば、必ず管轄の都道府県、管轄保健所、特別区の窓口又は専門の行政書士にご相談ください。
もちろん、当所へのご相談も承っております。
【お問い合わせ先】
[事務所名] ルカ国際行政書士事務所
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